
― 代表作をひとつ選んでご紹介ください。
どの作品が気に入っていますか?と聞かれると、いつも返答に困ってしまうんです…。
僕にとっての出来不出来は、お客様とどれだけ打ち解けられたか、楽しく仕事ができたか、など、その過程までもが評価であり、単に造形や色彩の優劣だけでは判断しきれないからです。
― とはいえ、はまさんが、どんなデザインをする方なのかはとても気になります。
そこで、今回、はまさんの個展にお邪魔しました。
神戸元町にて開催の個展の様子。
デザインの仕事以外でも精力的に作品制作、発表をつづけている。



― 抽象画を描かれているのですね。
はい。最近の一連の作品群は、美術作品のもつ線の美しさ、強さを、デザインの仕事にも生かす、といった研究の目的で始まりました。
元々実際のモチーフを前に描いていたのですが、ロゴデザインに携わるようになってから、シンプルな線をどのようにすれば深みを持たすことができるか、といったところに関心をもつようになったんです。
抽象画には、万人に伝わりやすいインパクトと視認性があります。
木や花、人や建物を抽象化し、個性を加える作業がロゴ制作には必要不可欠です。誰にでも、すぐに、何を表しているかをより端的にシンボル化し、かつ他では真似の出来ない強い個性をもたせる。
これが抽象画を描く事ととても深く関わっています。わかりやすく、端正に整い、深み、個性を兼ね備えた仕事をしていきたい、そう普段から心がけています。
― ロゴ作りの際には、抽象画の考えをどのように落とし込んでいるのですか。
ご依頼いただいた際にお客様からお聞きしたお話を、「その方にしかわからない」ものではなく、「万人に受け入れられる」ものとして、広がりを持たせたデザインに仕上げるようにしています。
たとえば、ロゴを作るにあたって、「このクマのぬいぐるみを使ってほしい。このクマには小さい頃からの思い入れがあるから…」と言われても、それはあくまでもご本人の心のなかだけにあること。一般消費者には関係のない話です。ですから、実際のクマのぬいぐるみとはかけ離れてしまっても、万人に親しみをもって受け入れられるラインやフォルムを優先してデザインします。
客観的な広がりを持たせることは、とても大切だと思うんです。
たとえば、ゴーギャンやゴッホも、風景画を描いているけれど、そのなかの木が人間の背中に見えたり、枝が腕に見えたり…その風景に行ったことがない人にでも、なにかが伝わるような、想像をかきたてる要素がありますよね。
この「広がり」がロゴデザインには必要だと思いますから。
― それでははまさんのお部屋の中を拝見させていただきます。



― 部屋にも作品を置かれているのですね。

押し付けずに、見る人によって深みが増すようなものを表現したいと思い、絶えず意識するようにしています。
この絵(写真右)は切り絵です。ただの丸の組み合わせのようで、立体的に見えるようにフォルムを微調整しています。
単色でも強く深みのある個性的な感じ。
アンリマティスの貼り絵やベンニコルソンのレリーフ等に一時期はまっていました。
マティスの抽象画は、人や動物にはもちろん見えるんですが、楽しさや優しさ等の形容、見えないものが、眺めているうちに浮かび上がってくるんです。
ベンニコルソンは、直線と曲線、円と四角が組合わさっている、一見色面の羅列のようなのですが、青が海を臨む窓辺に見えたり、港の突堤や、白波に見えたりするんです。
実際に物や風景を見て、それを深みを持たせながら簡略化しているんですよ。
いいなあと思うと、画集を見ながら模写をして過ごすこともあります。
― はまさんの作品は、グラフィックデザインの本で多数紹介されているそうですね。
中身はお見せできませんが、ビズアップで作らせていただいたロゴも掲載されていますよ。あるお客様に掲載の報告をした時、「えっ、すごい! 本に載るようなすごいロゴを 作ってもらえてうれしい!」と、あまりの大声で電話越しの声が割れるほどよろこんでいただいて(笑)。自分も本当にうれしかったですね。
デザインそのものの質の高さでお客様にご満足いただく事も大切なのですが、納品後、お客様がロゴを手にお仕事をされる中で、本当の満足へ結実していくんだと思うようになりました。
周囲からの評判がいいとか、デザインの本で紹介されているとか、あるいは僕自身がコンペで受賞しデザイナーとしての評価を高めていくことも、お客様がロゴに対する愛着をもって頂く事につながるんだなと。
常に期待を背負って仕事に取り組んでいます。
はまさんの掲載誌

「ブランディングデザイン4」
(グラフィック社編集部編)
「日本タイポグラフィ年鑑2009」
(日本タイポグラフィ協会編)
「ロゴデザインのアイデア!-実例で学ぶ!プロのデザインルール&テクニック」
(ワークスコーポレーション)
― ところで、デスクの端に置かれている、この発泡スチロールは一体なんですか。

えと、これは、僕の恩師からアドバイスを受けて置いているものです。
僕たちデザイナーは作業中、常にパソコンのモニター上で'図形'を見ている訳ですが、ロゴの「厚み」と「立体感」を見失わないよう意識するために置いています。
作業をするときに視界に入るようにしているんですよ。紙やパソコンの画面のような平面ばかりを見ていると、どうしても感覚が麻痺して厚みを感じなくなってしまいますから。
モニター上に正方形を書くことはできます。
だけど、それはあくまでもモニターの中の世界。実際の世の中には、正方形って存在しないんですよね。それは「立方体を真横から見た姿」でしかないんです。
ロゴデザインという仕事をする中で、常にこの「厚み」を忘れないようにしています。
― はまさんがデザイナーとして大切にしていることについて教えてください。

まずは、お客様が言わんとすることはなにか、言葉尻を追わずに、その背景に隠れているものを引き出して形にすること。職業的なデザイナーにはそれが必要だと思っています。
つぎに、ほかの人が真似できないアーティスト的な部分を表現すること。
今はパソコンを使えば誰でもデザイナーになれる時代です。
四角とか丸とか、きれいな形を組み合わせれば、ロゴは簡単にできてしまう。
でも線の強さ、造形の強さ、重み、奥行きといった造形美はごまかしがききません。
単調な図形を組み合わせただけでは駄目なんですね。
ある有名なデザイナーの言葉に「センスだけではなく、品を感じさせなければならない」というものがあります。やはり、誰もが作れるものではだめ。
職人的な立ち位置のなかに、自分のこだわり、強さをのせて、さらにお客様と僕、お互いの意思を上乗せして、いいデザインを作れたらと思っています。
こういう仕事ですから、我が強すぎてもだめなんですけれども、お客様が求めるものであり、かつ、自分のなかでは、後世にまで遺り続けるものを作りたいと考えています。
― プライベートのはまさんについて、ちょっとだけ教えてください。
これね、見せるのが恥ずかしいんだけど、中学生のときに作った理科のレポートです。

― すごい!(笑)
どうです?(笑) 全ページ、この調子で精細なイラストを…。しかも絵に懲りすぎてタイムリミットになってしまって……文面は教科書丸写し(笑)。提出期限に間に合わなくなって。先生には「もう、お前はこれでいいよ」と言われる始末でした(苦笑)
黒板の板書をノートに写す際は、レイアウト、大見出し小見出しと本文の優劣をわかりやすくしたり、行や文頭の位置をきれいにする事ばかりに集中していて、授業の内容を忘れてしまう事もありました。ちょっと変わってるでしょ?(笑)
中学生になると、学校新聞の見出しやレイアウトをよく任されていました。
小さい頃、習字をやっていて。上手に書けてみんなが驚いたり、ほめてくれたりするのがすごくうれしくて、「筆を使って上手に文字を書かなければいけない」という意識ができたんです。
ロゴデザインには、文字をデザインする「タイポグラフィー」という要素があります。「文字を正しく整える」、「文字に個性をもたせる」。小さい頃の経験が、こうして生かされているんだなあとつくづく感じています。
と、はまさんはこういう人ですが、ビズアップよりはまさんの実績をいくつかご紹介させていただきます。すばらしいロゴばかりです。
― 最後に、お客様へのメッセージをお願いいたします。
僕は誰とでもあうようなデザイナーではないかもしれません。
でも、僕は常に、僕のほかの誰にも真似できないロゴ、そして、何年たっても、何十年たってもひとつの'作品'として色褪せない「後世まで遺る」作品をつくるために全力で仕事に向かっています。ですから、お客様にも、ぜひ、全力で向かってきていただきたいです。
「ロゴ作ってよ」「はい、できました」「どうもありがとう」。こんな関係を、僕はお客様とは作りたくないと思っています。どんな思いで、なんのために、ロゴを作るのか。いまは簡単に会社を作れる時代になりましたが、良いロゴは簡単にはつくりません。ロゴが完成し、お店や会社がオープンしたあとも、末永くお付き合いさせていただけるようなデザイナーであり、人間でありたいと思っています。
僕のようなものでよろしければ、どうぞご依頼ください。

はま あきひろ
A.Hama
受賞歴
・亀岡商工会議所・ブランドイメージコンペ シンボルマーク部門/ロゴタイプ部門/イメージキャラクター部門
全部門にて最優秀賞
・神戸デザインフェスタ ポスター&バナーデザインコンペ最優秀賞
・日本タイポグラフィー協会主催デザインコンペ入選 (2009年度デザイ
ン年鑑掲載)
個展歴
四人展 (明石大久保市民ギャラリー)
二人展 (明石大久保市民ギャラリー)
グループ展 (神戸元町たじま画廊)
グループ展 (明石大久保市民ギャラリー)
グループ展 (神戸元町たじま画廊)
グループ展 (神戸元町たじま画廊)
グループ展 (あーとすぺーす写樂)
美術の樹展 (神戸元町たじま画廊)
グループ展(神戸元町たじま画廊)
個展 (神戸北野Cafe,Bar Chelsea)
グループ展 (神戸元町たじま画廊)
個展 (神戸元町たじま画廊)
グループ展 (神戸元町たじま画廊)
グループ展 (神戸三宮ギャラリー葉月)
個展 (神戸三宮 Cafe,Bar&Gallery entas)
個展 (神戸元町 Cahuita)
※ 取材日時 2010年1月
※ 取材制作:カスタマワイズ
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