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熊本県にお住まいのみなさま、このたびの地震に際し、心よりお見舞い申し上げます。ご無事でしょうか。
とはいえ、熊本在住の方はこのコラムを見ている場合ではないとは思います。
私も2週間ほど前に熊本県八代市にコンサルティングの仕事で行ったばかりでした。あのとき通った橋が落ちてしまっている写真をSNSで見て呆然としました。
コンサルティングに入っている私の友人の会社から送られてきた写真も、工場内がめちゃめちゃになっていました。幸い、怪我した人はいなかったようですが。。。
直接的、物理的な被害のあとは、経済的な被害もやってきます。物流などに影響が出ますし、仕事と復興の板挟みになる人も大勢いると思います。
なんでこうも日本ばかり大きな地震に見舞われるのでしょうか。私が子どものころはこんなに大きな地震が頻繁に来ることはありませんでしたが。。。
まあ、日本だけでなくベネズエラでも先日大きな地震がありましたけどね。
我々になにかできることがあればいいのですが、今は募金くらいしかないのでしょうか。
とはいえ、今週もコラムを出さないわけにはいきませんので、さっそくスタートさせていただきます。
「スモールブランディング©完全版」、前編、中編ときて、いよいよ最終回です。
これまでのおさらいを簡単に。
- ブランディングとは「選ばれるため、選ばれつづけるための施策全般」
- スモールブランディング©は以下の4ステップ+メリコの法則での答え合わせで構成される
┗STEP1:お客さんに魔法の質問をする(前編)
┗STEP2:専門特化する(中編)
┗STEP3:言語化する(できればストーリーにする)(今回)
┗STEP4:画(え)をつける(イメージング)(今回)
前編では、すべての起点となる「魔法の質問」(「〜〜と言えば?」「〇〇と言えば?」)でお客さんの声=宝物を集めるお話をしました。
中編では、「差」ではなく「違い」で勝負するための専門特化のお話をしました。
今回は、集めた宝物を「言葉」と「画(え)」に落とし込みます。ここをやりきらないと、せっかくの専門特化も宝の持ち腐れになります。
STEP3:言語化する
まず、魔法の質問「〇〇(あなたの会社)と言えば?」で集めたお客さんの声を、「強み」と「らしさ」の2種類に仕分けしていきます。
- 同業他社よりも強い、優れていると思われている点(主にスペック、定量的)を「強み」に
- 「好きだな」「ステキだな」「なんだか合いそう」といった感覚的(主にイメージ、定性的)な点を「らしさ」に
分類していくわけです。
ここで面白いのは、会社側が思っている「強み」と、お客さんが選んでいる理由が、往々にしてズレていることです。
たとえば、我々のお客さまに秩父でもっともたくさんの携帯電話を販売している会社さんがあります。
この会社さん、強みとして「データ移行や各種設定の手数料0円」を掲げていました。
ところが、実際にお客さまの声を集めてみると、それよりも親切で丁寧、わかりやすい接客を理由にそのお店を選んでいたことがわかりました。
こういうことがあり得るからこそ、自分の頭の中ではなく、お客さんの声から出発する必要があるんですね(もちろん「データ移行や各種設定の手数料0円」が強みではないわけではない)。
仕分けができたら、それをもとに「どんな言葉で自社のイメージを形づくるのか」を考えます。
ここで目指したいのが「コンセプト化」です。私の定義では、コンセプトとは「イメージを言葉で表したもの」。もう少し言うと、
- 聞いただけで頭の中に画(え)が浮かぶ言葉
- 多くの説明をしなくても一発で理解できる言葉
- ひと言で言い切れるくらい簡潔なのに、圧倒的な情報量を持った言葉
です。
たとえば「料理の鉄人」。「鉄人」のひと言で、「ものすごい修行を積んでそう」「超一流」というイメージと、腕組みした料理人の画まで浮かびますよね。「料理がめっちゃ上手な人」と比べて、どちらのほうが情報量が多いでしょう?
小林製薬の「トイレ、その後に」は、コンセプトがそのまま商品名で、使用シーンが具体的に浮かびますよね。
なぜコンセプト化が重要なのか。前編でお話ししたとおり、中小企業は「知られた瞬間に良い形で理解される」必要があるからです。
コンセプト化された言葉は、短い時間に圧倒的な情報を運べます。つまり、知ってもらった瞬間に「良い形」で理解してもらえるわけです。
コンセプトのつくり方としては「比喩」が非常に強力です。
ビズアップではデザイナーの目指す姿を「親切で丁寧なロゴデザインのお医者さん」と言語化しています。
「優しく対応しましょう」では情報量が少なくて行動に落ちませんが、比喩なら誰もが自分の体験した「親切なお医者さん」を思い浮かべて、「ああいうふうに対応すればいいのか」と一発で理解できるんです。
比喩以外にも、たとえば私が以前在籍した経営者の会は、「30年後も一緒に酒を酌み交わせる仲間をつくる」というコンセプトでした。これも画(え)が浮かびますよね。私、その会に行かなくなっちゃいましたけど(笑)
ストーリーにする
言語化は、ブランディングの大小に関わらず必ずやるべき工程です。
とりわけスモールブランディングにおいては、「ストーリー」があるか、つくれるかどうかが重要だと考えます。
ストーリーは、お客さんの声のみならず、
- なぜこの仕事についたのか
- なぜこの仕事をつづけているのか
から生み出されることが多いです。
ここでヒントになるのが、私の心の師匠サイモン・シネック氏が提唱する「ゴールデンサークル」です。
円の内側から「why(なぜ)」「how(どうやって)」「what(何を)」となっています。
多くの会社は「what=商品」を語りますが、人の心を動かすのは「why」です。ストーリーとは、この「why」を物語の形にしたものと言ってもいい。
ストーリーのお手本として、中編でチラッと登場した「靴磨き世界チャンピオン」長谷川さんをご紹介します。
長谷川さんはいろいろな職を転々としたあと、お金がなかったために100円ショップで靴磨きの道具とお風呂の椅子を買って、靴磨きの仕事をはじめました。
いろいろな人の靴磨きから見よう見まねでノウハウと技術を手に入れ、靴磨きで日本一周をするなどを経て、世界チャンピオンにまで登りつめました。
一見どん底と思えるような状況から世界チャンピオンへ。こういうストーリーには強烈な共感が生まれます。
長谷川さんがメディアに取り上げられつづけるのは、「靴磨き」という専門特化の希少性に、このストーリーが掛け算されているからだと私は考えています。
メガネチェーンOWNDAYSの田中社長も、会社再生のストーリーを「破天荒フェニックス」という本にして、強い共感を生みました(経営者なら身の毛がよだつ内容なので、ぜひ読んでみてください)。
ちなみに、ビズアップのWHYは私の幼少期の体験から来ています。自分の価値を理解してもらえないと勝手に思い込み苦しんだ津久井少年(笑)。
カンタンにいえば、重要な人と思われたいという承認欲求でした。それを私は「普通コンプレックス」と名付けています。
で、いまだに「良い商品、良い会社なのに人々に認めてもらえていない」という状態がイヤでいても経ってもいられないわけです。そこに過去の自分を重ね合わせてしまうから。
なので、それを表現の力で解決する=ブランディングというのがビズアップのWHYであり、ストーリーというわけです。
ビズアップをゴールデン・サークルで表すと・・・
ストーリーは必ずしも「這い上がった経験」でなくても構いません。
たとえば、これも自社の例ですが、ビズアップの「ロゴ無料提案」もひとつのストーリーにできます。ちょっとストーリー化してみましょう。
デザイナーという人種は、アイデアに対しての報酬を求めると思いきや、そのアイデアを「いらない」と言った途端に「作業対価」を求めてくる。「これだけやったんだからお金を払うべきだ」と。だからこそ、デザイナーは絶対に「ロゴ無料提案」をやらないだろうと、この業界にいた経験からわかっていた。
一方、お客さんの立場にたてば、いらないものにお金を払いたくない。自分だって払いたくない。
そこには明らかに「社会の歪(ひずみ)」があった。それなら、「無料提案」で自分が業界をひっくり返すしかないだろう、そう思った。(「ビズアップ創業記」より)
実際には「ビズアップ創業記」なんていう読み物はないんですが(笑)、なんとなくストーリー感が増しますよね。
ストーリーがスモールブランディングで発揮する効果は、
- 目立つことができる
- ストーリーなのでわかりやすい
- 好感を持ってもらえる
の3つ。ストーリーが際立てば目立ちますし、物語は人間の理解力を引き上げてくれます。共感を得られれば、より一層「選ばれる」可能性が高くなるわけです。
これ、何になっているかわかりますか?「メリコの法則」になっています。
STEP4:画(え)をつける(イメージング)
言葉が決まったら、最後は「画(え)」です。見た目からどのような印象を持ってもらうか。
人は、見たものから必ず何らかの影響や印象を受けます。私はこれを「デザインの無拒否性©」と呼んでいます。
たとえば、太っていて髪はボサボサ、肩はフケだらけで歯が黄ばんでいる、おまけに目の焦点が合っていないランニングシャツ姿のおじさんを見たら、「ヤベーな」「近寄りたくねーな」という印象を持ってしまいますね。
どんなに有名な凄腕シェフがつくった高級な料理でも、無造作にビニール袋に放り込まれていたら、人は「残飯だ」と認識します。
「見ない」という選択ができない以上、見た目は必ずお客さんに何かを「与えてしまっている」んです。だったら、狙って与えたほうがいいに決まっています。
再び長谷川さんの例。長谷川さんは「靴磨きはアート」というコンセプトを軸に、飲み物を片手に会話を楽しみながら自分の靴が磨かれていく様子を見られるお店を青山に出されています(今は長谷川さんは店頭に立つことから引退されたそうです)。
店内は高級感と専門性が漂うつくりで、お酒も呑める。ご本人もスーツをビシッと決めていて、ガード下の靴磨きのイメージとは明らかに違います。
「子どもたちの将来の夢に靴磨き職人が出てくるようにしたい」という「why」を持つ長谷川さん。それがちゃんと見た目に表現されているんです。
長谷川さんが立ち上げたBrift Hのイメージ動画
このように、旧態依然とした業界に新しいイメージ=見た目を持ち込んでうまくブランディングするケースを、私は「進化形」と呼んでいます。
お煎餅業界の「せんべいブラザーズ」は、「『せんべい』を、おいしく、かっこよく。」をテーマに、味だけでなく見た目も新しいお煎餅を販売し、様々な商業施設に出店しています。
コインランドリーの進化形「Baluko Laundry Place」は、おしゃれな空間にカフェを併設し、「一回帰ったほうがいいのかどうしようか??」というコインランドリー利用時のあの葛藤に解決策を提示してくれます。
選ばれた商材が、進化形にできるものだと、スモールブランディングはより強力になるというわけです(だからといって、進化形にできないといけないわけではありません)。
ここで注意。イメージは「かっこよければいい」というものではありません。ポイントは、
- 違い=今までになかったか
- 好感=好感が持てる見た目か
の2つです。好感さえ持ってもらえるなら、必ずしもかっこよい必要はありません。ドン・キホーテを思い出してください。
そしてもうひとつ、言葉と画(え)は必ず一致させること。
以前見かけたフィットネスジムの看板で、「筋二郎」という漢気あふれるネーミングに、華奢な女性がさわやかに運動している画が添えられているものがありました。

「筋二郎」に反応する人はあの写真に価値を感じないし、あの写真に反応する人は「筋二郎」に入りたいと思わない。言葉と画(え)がズレると、どちらのターゲットも逃すんです。
答え合わせ:メリコの法則×チェックリスト
さて、4つのステップが出揃いました。最後に、スモールブランディング©の全体をチェックリストとしてまとめます。
魔法の質問で集めたお客さんの声をもとに、「専門特化」「言語化(ストーリー)」「画(え)」を考える。そしてそれぞれを、メリコの法則で検証するんです。
- 専門特化 × メ:その特化は目立つか?(希少性はあるか)
- 専門特化 × リ:何の専門かが一発でわかるか?
- 専門特化 × コ:品質への信頼を感じてもらえるか?
- 言語化 × メ:その言葉は埋もれないか?
- 言語化 × リ:聞いただけで画が浮かぶか?(コンセプト化できているか)
- 言語化 × コ:ストーリーに共感が生まれるか?
- 画 × メ:今までになかった見た目か?
- 画 × リ:言葉と画(え)が一致しているか?
- 画 × コ:ターゲットが好感を持てる見た目か?

長谷川さんに当てはめてみると、「靴磨き専門×世界チャンピオン(メ)」「靴磨きはアート(リ)」「どん底からのストーリーと青山のステキな店(コ)」と、見事に全部埋まります。だからあれだけ「選ばれる」わけです。

そして重要なのは、これで終わりではないということ。施策を打ったら、またSTEP1に戻ってお客さんに魔法の質問をして、狙ったとおりのイメージが脳内に築けているかを答え合わせする。
ズレていたら言葉と画(え)を磨き直す。このループを回しつづけることが、スモールブランディング©のプロセスそのものです。
この表が説得力の高いもので埋まると、選ばれる=ブランディングできる可能性が高くなります。ぜひ御社でも、この表に当てはめて考えてみてください。
シリーズ全体のまとめ
- ブランディングとは「選ばれるため、選ばれつづけるための施策全般」(前編)
- 起点はお客さんへの魔法の質問「〜〜と言えば?」「〇〇と言えば?」(前編)
- 中小企業は「差」ではなく「違い」で勝負し、その最有力手段が専門特化(中編)
- 集めた声を「強み」と「らしさ」に仕分け、コンセプト化・ストーリー化する(後編)
- 言葉に一致した画(え)をつけ、メリコの法則で答え合わせをしつづける(後編)
長々とお付き合いいただきありがとうございました。「うちの場合はどう当てはめればいいの?」という方は、お気軽にご相談くださいね。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
-
ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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