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今週もやってきました、コラムの時間です。今日の東京はここ数日の気候から打って変わって過ごしやすい涼しい日となりました。
先月49歳の誕生日を迎えたわけですが、寄る年波には勝てず、最近は呑み会がつづくとキツい。
10年くらい前までは、夜中まで呑んで深夜2時過ぎに寝ても、朝6時には起きて8時過ぎには会社に行って仕事をしはじめていたのに。そんなのもうムリ。
サッカーなんかをやってましても、昔のようにキレた動きなどはなかなか難しくなってきました。そのかわり頭を使ったプレイをしようという別の意識が働くのはいいことですけどね。
サッカーってボールの扱いとか肉体的な強さ(足が速いとか背が高いとか)も大事なんですが、頭を使った「ポジショニング」がめっちゃ大事なんですね。これってブランディングにも似ているなーと思います。
さて、歳を取ってもうひとつ、「老い」なのかどうなのかわかりませんが自分が変わったなと思うのは、「涙もろくなった」ということです。
といいつつ、私はいまだに人前で泣くことがあまりできません。おそらく人格に問題があるのでしょう(笑)。
男性でも感動して人前で泣いている人を見るとちょっとうらやましいな、と思ったり。
それでもだいぶ涙もろくなり、家で動画なんぞを見ていても「(感動して)うっ、やばい。。。」みたいなことが最近多い。そんなときはトイレに行ってみたり(笑)。
いろいろと感動するシーンを思い浮かべてみると、自分の場合はスポーツの感動が多いかもしれません。特に、プロスポーツ選手の引退のセレモニーとか泣けます。
全国高校サッカー選手権大会で、敗退したチームのロッカールームの様子を伝える「最後のロッカールーム」とかも泣けちゃいます(ご存知でしょうか?)。
泣き崩れる選手を励ます主将、ここからがスタートだと鼓舞する監督、涙なしでは見れません。特に私の場合は少年サッカーチームのコーチをしているので、選手としてもコーチとしても感情移入してしまいます。
ちょっと古いけど、2015年の大会のこれがわかりやすいかも。
あと、最近のだと今年のお正月にやっていた大会の決勝戦のあとの流通経済大学柏のロッカールーム。これ、ビズアップのスタッフに見てほしいな〜。
「最後のロッカールーム」って、ネーミング天才的に最高やん。
そんな私も、高校選手権とは次元が違いますが、やはり高校のサッカー部の最後の大会のときに負けて人前で泣いたことがあります。
地区大会決勝、勝てば都大会出場、負ければ即引退、という試合でスタメンで出場。何もできずに途中交代させられ(汗)、私の代わりに入った選手が同点ゴールをあげました。
試合は延長でも決着がつかず、PK戦にもつれ込み、後輩がことごとく外し試合終了。
試合終了直後、生意気だった後輩たちがそのときばかりは口々に「すみませんでした」とまさに号泣しながら詰め寄ってきました。
そのとき自然と出た言葉は「ありがとう」だったんですが、そうしたらもうダメでしたね。私も号泣。
ちなみにその日の夜に付き合っていた子にフラレて高校生にもなって1日2回号泣(爆)。
さて、どうでもいい前置きから今日のお話です。今日は「動画」について、いくつか紹介をしながらお話してみたいと思います。
たぶん今日はハンカチかティシュを用意してからこのコラムを読んでもらったほうがいいかもしれません。もしかしたら人前で泣くことになるかもしれませんよ(笑)。
あの芸人が?あの芸人だからこそ感じる「示唆」
動画、ここ数年すごいですよね。
youtubeができたのがおそらく2005年か2006年くらい。それを考えるともう20年経つのかという感じですが、スマホの普及やSNSにより、動画はどんどん「一般的」になりました。
これらができる前までは、動画はテレビと映画くらいしかなかったわけです。
youtubeだってできたときは、見逃しとか過去の面白いシーンとかのテレビ番組を見るためのツールに近かったです。あとは音楽を聴くくらい。
それが、個人がどんどん動画をつくりはじめる時代になりました。
以前は、各企業がプロモーションを行おうとすれば、テレビ(CM)では短い時間の中に色々なことを盛り込まなければなりませんでした。
今はひとり一台テレビを持ち歩いているような時代ですから、企業側もいろいろな切り口の動画をつくれるようになりました。
つい最近では、この動画がすごいいいなーと思ったんですよね。
画像の人、誰かわかりますか?まあ画像の中に答えが書いてあるんですけども。。。そうです、お笑い芸人のコウメ太夫です。
この広告のすごいところは、示唆に富んだ内容で「何度も見たくなる」のに、おそらく制作費がめちゃくちゃ安いであろうこと。
我々業界人からすると、クリエイターのアイデア次第ではお金をかけなくてもブランディングはできるんだという「希望」みたいなものを感じさせてくれる動画です。
それにしてもなんで「何度も見たくなる」のでしょうね。なぜ「示唆を感じる」のでしょう?ちょっと分解して探ってみたいと思います。
- 「普通の人間のコウメ太夫」と「芸人としてのコウメ太夫」の対比
- 「階段」と「エスカレーター」の対比
- 芸人としてのレベルが高くない(と多くの人が感じている)コウメ太夫を起用していること
- BGMが入っておらず、下駄の音とエスカレーターの音だけが響いていること
- セリフの内容
こういったものが「何か(このCMの場合「人生」)を象徴していると感じさせていると考えます。
ポイントは、「セリフの内容」=「言葉」は、「示唆を感じさせる要素の一部でしかない」ということです。映像という画(え)があるから(音もですけど)、示唆をより感じさせるわけです。
これ、すべてを言葉で表現することって可能でしょうか?たとえば、このCMを小説のように文章にしたとして、この示唆や感動を同じように味わうこと、きっとできませんよね。
「言葉と画(え)が大事」といつもこのコラムでお話していることを体感できる動画なのではないでしょうか?
説明されていないのに、なぜ理解できるのでしょう?
つづいては、こちらの動画はいかがでしょうか。
こちら、大塚製薬の「カロリーメイト」のCMなんですけども、これ、何年前でしょうか。そのとき参加していたセミナーの最中に見せられて、ちょっとやばかったです、泣きそうになって(変な怪しげなセミナーではないですよ笑)。
演者さんも含めたクリエイターの力には本当に驚かされますね。
たとえば、子どもの成長を象徴的に表すのに使われたシーンが、
- 我が子が自転車に乗れるようになったとき
です。子どもを持つ親ならこれは誰でも感動するのではないでしょうか。それを思いつくクリエイターの表現力って本当にすごいとしか言えません。
この動画は、ひとつひとつのカットにすべて意味=背景を連想させるストーリーが盛り込まれています。
主人公はふたり。息子とお母さんです。
最初のシーンは、合格発表の掲示板の前で大勢の合格者が喜んでいるのに喜んでいない主人公を見せるだけで「受験に失敗した」ということが十分伝わります。
言葉(文章)だけではイメージ(合格者の喜びと主人公の落胆、その対比)を伝えるのにものすごい量が必要になりますが(それでも表現しきれるかわからない)、映像ではそれをたったの5秒で伝えられています。
友だちのカラオケの誘いを断るシーンは、付き合いが悪いと思われても泣く泣く断る受験生の複雑な心境をよく表現した「あるある」ですし、ゲームセンターや公園でゲームをやっているシーンはダメだとわかっていてもどうしてもやる気が出ない心境を表現しています。
つまり、受験生の共感を生みます。
お母さんが働くスーパーの前でお母さんに声をかけられず通り過ぎるシーンは、自分の浪人と進学のためにちょっとでもお金を稼ごうというお母さんに申し訳なさで声をかけられないという心理を描写しています。
一方、もうひとりの主人公の母親の苦悩は「子どもが苦しんでいる(戦っている)のに直接的なことは何もしてあげられない」です。親ができるのは、「応援すること」しかないんですね。
お母さんだって辛いはずなのに、ただただ耐え忍んで陰ながら応援する。最後のシーン、パッケージに書いた「大丈夫!」を見たときにはうなりました。「究極の応援」なのではないかと。
どこまでいっても、自分の辛さよりも子どもの辛さを一番に考えてあげるのが親なんですね。
この動画にはセリフがほとんどない=言葉が出てこないのにそれを伝えられるクリエイターの表現力にはまさに脱帽です。BGMのレミオロメンの3月9日という曲がまたシーンを盛り上げますね。
記憶というのは感情と結びついたときにより強くインプットされるそうです。
私が高校生になって1日2回も号泣したことを覚えているのもそこに感情が伴っているからです(笑)。つまり、彼女にフラれたのは相当ショックだったということです(汗)。そのときは2日くらい夢に出ましたから、サッカーの引退より辛かったのでしょう(爆)
このCMを考えてみると、特に最後のシーンのパッケージに書いた「大丈夫!」を見てみるとわかること、それは、大塚製薬が売ろうとしているものは「バランス栄養食」ではないということです。
いや、もちろんそれが売りたいのですが、食品を買ってほしいと言って買ってくれる人をターゲットにしていない、と言い換えてもいいかもしれません。
たぶん涙腺崩壊すると思います
次に、こちらの動画をご覧ください。
「東山堂」という音楽教室のCM。これも感動します。今9歳のムスメが結婚するときのことを想像すると(泣)。。。
ちなみに私は結婚してまもなく20年になりますが、先程お伝えしたとおり、人前で泣けない私は自分の結婚式でも泣きませんでした。
最後に両家の親と新郎新婦(私とヨメ)が前に立って挨拶するときのこと。母親がそろそろ泣くかな、と思っていたら号泣したのはまさかの父親でした(笑)。
あまりの号泣ぶりに、母親は泣くどころか苦笑い(笑)、ヨメの両親も苦笑い(笑)、会場からはクスクス笑う声と「しっかりしろー!」という親戚のおっさんのやじ(笑)
しかし、父親も人前で泣けないタイプの人間で、私も父親が泣いたところを見たことがなかったのでちょっと感動しましたけどね。このシーンも覚えているということはやはり感情が強く伴っていたのでしょう。
さて、ここで考えなければならないことがひとつあります。
人を感動させているのにちょっと興ざめするような話ですが、では実際にこれらの動画はビジネスに役立つのか、ということです。
「脳科学マーケティング100の心理技術」という本には以下のようにあります。
イギリスの広告業界団体IPAは、IPA Effective Award(広告効果大賞)への過去30年分の応募作である広告キャンペーン1400事例をデータベース化している。
そのデータを使って、感情訴求に依存した広告と理性訴求と情報を使った広告の利益増加率を比較分析した結果、感情に訴える内容のみの広告が、理性に訴える内容のみの広告に比べ2倍の効果(31%対16%)を上げていることがわかった。
また、感情訴求と理性訴求が混ざった広告と比べた場合も、感情訴求だけの広告のほうが(31%対26%で)いくらか効果が高かった。
本によると、感情訴求が理性訴求に勝るのは、私たちの脳は感情的な刺激を処理する時は
- 認知処理過程を通さない
- より鮮明に記憶する
というふうにできているからだそうです。
実際に、カロリーメイトが「受験生」のCMでどのくらい売上を伸ばしたかはデータが出てきませんでしたが、東山堂のほうはというと、音楽教室への問い合わせ数、入会者数ともに前年比200〜300%になったそうです。
私が大好きな「ゴールデンサークル」の提唱者、サイモン・シネック氏(私の心の師匠)はこう言っています。
カロリーメイトや東山堂のCM動画を見て「いやいや心理誘導だろ」と思う人もきっといるでしょう。
しかし、「自分たちの感動するもの」を伝えてお客さまになってもらうというのは、サイモン・シネックが言うとおり、理性に訴求して何かを売るよりもはるかに大切なことだと私は思います。
で、その東山堂さんですが、このCMの結果、今度はこんな動画が生まれました。マジで涙腺崩壊します。
実際に娘さんの結婚式で演奏するために東山堂に通った人の動画です(選曲もいいのよね)。
大企業じゃなくてもできる!感動する動画でお客さまに選ばれることができる時代
ここでとても重要なことがあります。
それは、カロリーメイトのCMやサントリー伊右衛門特茶のようなCMは、コストの面から一昔前には中小企業にはできなかった、ということです。
しかし今はどうでしょうか。
カロリーメイトはもちろん超一流クリエイターを使ってしっかりとお金をかけてつくった動画だと思います。そしてそれを広めるためのコストもしっかりかけていると思います。
でも今の時代は、大企業ほどお金をかけなくても動画をつくることが可能になりました。AIの発達によって、びっくりするくらい低コストで感動的な動画がつくれるわけです。
そして、「第三次比較戦争」の今の武器の主流はSNSとスマホです。これも低コストです。
つまり、ブランディングの2つの指標、
- 価値を高める=動画
- 価値を広める=スマホとSNS
ということで、やり方次第で中小企業でも同様のブランディングができる時代となったわけです。
そして、そこには「感動」というコアがあります。
サイモン・シネックのゴールデンサークルでいうところの「why」です。私がブランディングでいちばん大切だと思っているものです。
この「why」の中に、必ず「感動」のヒントや種が眠っているはず。
動画をつくりたければ、表現は表現のプロに任せればいい。伝えなければならないのは「why」です。
つまり、その「why」がクリエイターすら感動するものであれば、私は最高の動画ができると思います。
そして、その感動はSNSとスマホをとおして世界中の人に広まる可能性があるのが今の時代というわけです。
ちなみに、ビズアップも自社の動画をつくります。
実は、もう10年くらい前からずーーーーーっと頭の中に脚本はあって、BGMで使う曲までイメージがあったのですが、当時の技術では制作コストが莫大にかかることから手が出せませんでした。
AIにより、それが実現可能になったわけです。
今年の秋くらいには公表できるかな〜。ぜひお楽しみに。
また、動画作成のご依頼も受けています。「why」だけを握りしめてきてください。感動する表現は我々プロにお任せを。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール

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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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