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今日も今日とて、コラムを書きます。
いつもだいたい会社の近くのエクセルシオールカフェに来て執筆しています。コラムを書くに限らず、よくこの喫茶店に来ている関係で、お店の人に覚えられてしまいました。
「いつもありがとうございます」
このひとこと、本当に重要。覚えてくれているというのはうれしいものですからね。これをほとんどの店員さんが伝えてくれるのが、笹塚のエクセルシオールカフェ。すばらしい。
リピーターを増やすことに寄与する超簡単な技があります。知りたいですか?(笑)
それは、「いらっしゃいませ」ではなく、「あ、いらっしゃいませ」というだけです。
この「あ、」があるだけで、お客さんの多くが「自分を覚えてくれている、認識してくれている」と感じてリピートすると言われています。
私の提唱するブランディングは「選ばれること」であり、「選ばれつづけること」です。この「選ばれつづけること」に大きく貢献してくれるのが「あ、」や「いつもありがとうございます」なんですね。
店舗ご商売の方はぜひやってみてください。また、BtoBの企業でも、かかってきた電話に「あ、」と付け加えたり、自分宛ての電話でなくても「担当は○○ですよね?」と伝えるだけでも同じ効果を出せます。
では本日のコロコロニュース。
日本を侵略するのに戦争なんていうコスパの悪いことする必要ないよ
では本題です。本日はブランディングのお話。
ブランディングがうまく言っているかを調べる「魔法の質問」というものがあります。これも先ほどの「あ、」と同じように、拍子抜けするくらい簡単な質問です。
知りたいですか?(笑)その前にまずは。。。
●消費者の頭の中のイメージを制するものが市場を制する
アル・ライズという人をご存知でしょうか。私が大好きなブランディングの大家なんですが、彼は著書の中でこのように言っています。
成功する企業は、ひとつの商品なりサービスなりマーケットに、しっかり的を絞る。つまりフォーカスしてからスタートする。
-「フォーカス」アル・ライズ著より-
アル・ライズの基本的な考え方がこれです。
しかし、会社の規模に関わらずこの「フォーカス」を失うための様々な誘惑が、ごく自然な形で企業を襲うとアル・ライズは言います。
アル・ライズはフォーカスを失うための「6つの誘惑」があるとしています。
- 販売・流通・・・この販路を利用すれば他のものも売れるのでは!
- 製造・・・製造の稼働率を上げるために他のものもつくろう!
- マーケティング・・・自社のマーケティング力を使えばどんな市場でも売れる!
- 顧客のライフサイクル・・・今の顧客が想定した年齢を超えてしまっても買ってもらえる商品もつくってしまおう!
- 地理的問題・・・他のエリアでも同じやり方でうまくいくはずだ!
- 価格設定・・・価格が高いという声があるので、廉価版も作ってしまおう!
アル・ライズによると、これらの施策は失敗する可能性が高いそうなんですね。表向きにはうまく行っているように見えても内情は失敗している企業がたくさんあるとのこと。
5の地理的問題については「全国展開している企業もあるよ」という反論がありそうです。
たとえばスターバックスはシアトルを飛び出して世界中に店舗があります。しかし、スターバックスの店舗は全世界共通で、同じデザイナー陣がすべて管理していると言われています(最近ちょっと変わったかもだけど)。世界中どのスターバックスにいってもあの内装、雰囲気、味が手に入るのです。
何が言いたいかというと、このようにフォーカスしているポイントは必ずあるのですね。
では、1〜6をやってはいけないのかというと、必ずしもそういう訳ではありません。
もしも違う商材を扱ったり廉価版を扱ったりしたいのであれば、
- 必ずブランドを分けること
これが必要だとアル・ライズは言っています。つまり、1ブランド1フォーカスということですね。
アル・ライズはこれを「消費者の頭の中にひとつの言葉を所有する」と言い換えています。
あなたがブランドの成長を考えているのなら、「ブランドの焦点を絞り、消費者の頭の中に一つの言葉を所有することによってどれだけの市場を創造することができるだろうか」と問いかけるのが正解になる
-ブランディング22の法則 アル・ライズ著より-
アル・ライズは、消費者の頭の中のイメージを制するものが市場を制する、と言っています。そのためには、一つの言葉を所有しなければなりません。
●ブランディング「魔法の質問」
「お昼にうどんが食べたいなー」
と思ったときに思い出す特定のうどん屋さんはありますか?自宅の近所でも会社の近所でもかまいません。
おそらく「あそこの店だな」というものがあると思います。
冒頭でもお話しましたが、ブランディングとは私の定義では「選ばれる(選ばれつづける)ための施策全般」です。
ある特定のうどん屋さんは狙っているかどうかは置いておいて、結果的にブランディングができていると言えます。
ちょっと想像してみてください。地元の徒歩圏内にもしもうどん屋さんが1軒しかなかったとしたら。
「うどんが食べたい」と思ったときに思い出されるのは間違いなくその1軒ですよね。
「この街でうどん屋さんと言えば?」
という質問にはその店がでてくるはずです。
冒頭のブランディングができているかを知る魔法の質問がこれです。つまり、
- 「◯◯と言えば?」
です。これ、テストに出ます(笑)。
この答えに御社の名前や商品がくればブランディングはざっくりとできています。
実は、大企業だろうと小さい会社だろうとお店だろうと、本質はこれとあまり変わりません。お客さんやお客さんになりそうな人の「頭の中のシェア」をどのくらい支配しているか。
それを確認するための「魔法の質問」が、「〇〇と言えば?」というわけです。
まさに、アル・ライズが言う「消費者の頭の中にひとつの言葉を所有する」ができているかどうかを知るための質問が、この「魔法の質問」ということなんですね。
ちなみに、「うどん屋さんがいっぱいあったらどうするんだ」ということについても回答しておきます。
「○○と言えば」の「○○」は、必ずしも商材が入るとは限りません。
たとえば、「お昼にタバコが吸える店でご飯を食べたい」という要望があったとき、人は頭の中で「タバコが吸える店と言えば?」という質問を自分に投げかけています。
「体に良さげなものが食べたい」というニーズに対し、「この辺りで体に良さそうな食事の店と言えば?」という質問を自分に投げかけます。
そうすると、健康志向のお店はもちろんのこと、人々の頭の中にあるイメージ「定食ってバランスよくて体に良さそう」が発動し、定食屋さんが選ばれる可能性があります。
このように「○○と言えば」の「○○」は必ずしも商材とは限らないわけです。また、同じ商材でも他とは違うニーズに対応することで選ばれることができます。
「同じ商材でも他とは違うニーズに対応することで選ばれること」を「ポジショニング」と言います。
「女性でも入りやすい定食屋さん」というポジショニングで成功したのが、大戸屋ですね。
アル・ライズが言う「消費者の頭の中にひとつの言葉を所有する」は、さらに言い換えると次のようになります。
- 「○○と言えば」の質問に1番に思い出してもらえるかどうか
これを、私の友人のコンサルタントである一圓克彦氏は「脳内SEO」と名付けています。
「SEO」とは検索エンジンで何かを検索した際に、より上位に自社のホームページが表示されるよう施策することです。上位に表示されれば、それだけ受注や問合せが増えるわけで、これは「脳内SEO」もまったく同じというわけです。
ちなみに、この「魔法の質問」には実はもうひとつの使い方があります。
- 「(御社名)と言えば?」
という質問をするのです。お客さまや市場の見込み客に「自社と言えば?」と質問する。
するとどうでしょう。自社がお客さまからどのように認識されているかがわかるのです!
「ロゴ」とか「パン」とか具体的な商品名で答えが返ってくることもあれば、「うまい」とか「早い」とか「安い」とかの形容詞(≒イメージ)で返ってくることもあります。
自社の状況分析ができるので、ぜひやってみてください。
●消費者の頭の中にひとつの言葉を所有することに成功した、ある企業とは?
「魔法の質問」はどんな企業規模でも活用できます。
「いやいや、そんな町のうどん屋と大企業は違うでしょ」
そう思うかもしれませんが、本質は変わりません。変わるのはターゲットの量、つまり市場規模だけ。
町のうどん屋さんはターゲットの量がその町だけです。これが「商圏」というやつですね。大企業は商圏が全国規模、というだけです。
ここでポイントになってくるのが「競合他社」の存在です。商圏が大きくなればなるほど、必ずといっていいほど競合他社や競合商品が現れます。
そのときに、より多くの人の頭の中を占領できるか。これが選ばれるための施策のひとつとしてとても重要です。
大企業が大量の広告費を使って多くの人の頭の中に自社商品を焼き付けようとするのはこのためです。
こうなってくると肉弾戦と言っても過言ではありません。広告費を大量投下し、営業マンを大量に投入できる会社が結果的に勝つ確率が高くなります。
でも、ここで「おや?待てよ?」となります。そもそもなんでブランディングするのか?
それは広告費を大量に投下したり、営業マンを大量投入せずとも効率的に「選ばれたい」からではなかったか。。。
この本末転倒チックな現象は半分仕方がないことではあります。特に競合が多い市場ではどうやってもこの現象は多かれ少なかれ現れます。
ではどうすれば資金力勝負ではない戦い方ができるのか。
難しいですけどね。徹底的にビジネスモデルを見直すしかないと私は考えます。
「ビジネスモデル」を分解するならば、
- 何を
- 誰に
- どうやって
売るかということになります。そして、これらをもう少し詳しく見ていくと、
- 何を・・・商品 → 同じ商品を扱う競合が少ないほうが良い
- 誰に・・・ターゲット → ターゲットは多いほうが良い
- どうやって・・・施策が多岐にわたる → 資金力勝負をしなくて良いほうが良い
と言えます。
「同じ商品を扱う競合が少ないほうが良い」となるとニッチになりがちです。つまり「ターゲットは多いほうが良い」と矛盾しがちになってくるわけです。難しい。
また、多くの企業は、「何を」「誰に」よりも「どうやって」売るかを考えがちです。なぜなら、「施策が多岐にわたる」からです。「何かやることがありそう」なんですね。
これらのことから、「何を」「誰に」「どうやって」を考えるときに、「どうやって」を一番よく考え、次に「誰に」を考え、最後に「何を」を考える会社がほとんです。何なら「何を」はほとんど考えていない会社さんが多いはず。「商品は昔から決まっているから」と。。。
もちろんそれが間違っているわけではありません。が、実は「何を」から考えはじめて成功した企業があるんです。
どこだと思いますか?
ちなみに、おさらいの意味を含め少し整理すると、
- ブランディングは選ばれるための施策全般
- 選ばれるためにお客さまの頭の中を占領したい(◯◯と言えば?)
ということなわけです。
で、お客さまの頭の中を占領するのにもっとも手っ取り早い方法のひとつは、
- まだこの世にないものをつくる
です。アップルのiPhoneはまさにこれです。スマートフォンはまだこの世になかったと言ってもいいわけです。
しかし、これには大きなリスクが伴います。まだこの世にないものは市場がまだ存在していないことと同義です。つまり、開発してみたはいいもののまったく売れない、ということも起こりうるわけですね。
そこで。。。お客さまの頭の中を占領するのには、もうひとつ方法があります。それは、
- すでにこの世にあるけど、「◯◯と言えば?」の質問の答えにどのブランドの名前も挙がらない商品・サービスを見つけ、いち早くナンバーワンになる
という方法です。
「??」でしょうか。では具体例を挙げましょう。以下の質問にはどんな答えがでますか?
「掃除機といえば?」
おそらく、今であれば大半の人が「dyson(ダイソン)」と答えるのではないでしょうか?「何を」から考えはじめて成功した企業とは、まさにdysonのことです。
掃除機は、それまで多くの家電メーカーが製造していました。日本だけでもそういった状況ですから、海外も含めるとどれだけのメーカーが掃除機をつくっていたことでしょうか。
しかし、「掃除機といえば?」の質問の答えとして「ここ!」という明確な答えはなかった(少なくとも日本では)。いわば、消費者の頭の中(脳内シェア)がガラ空きだったわけです。しかも「誰に(ターゲット)」が多い。
そこに、新しいスペックとイメージをもったdysonというブランドが登場したわけです。価格の高さは逆に「本物」感というイメージを醸成させることに成功しました。これで一気にマインドシェアを奪うことに成功したんですね。
では、dysonは狙ってこれをやったのでしょうか?それともたまたまでしょうか?私は狙ってやったと考えています。
それは、dysonが掃除機のあとに出した製品を調べるとわかります。
- 扇風機
- ドライヤー
- 卓上ライト
です。いかがでしょうか。どれもどこがナンバーワンか(○○と言えば?)と聞かれると答えられない製品ばかりではないでしょうか?
「ナンバーワンのイメージがないのに世の中の多くの人が使用する製品」でナンバーワンになる、というのがdysonのブランディング戦略だと考えられるわけです。
しかしながら、dysonもアル・ライズのいう罠にかかってしまっています。それは
- 3.マーケティング・・・自社のマーケティング力を使えばどんな市場でも売れる!
の罠です。
アル・ライズは「ブランドを分けろ」と言いました。しかしdysonは分けなかった。
気持ちはわかります。ブランドは資産ですから、その資産を活用したいというのはよく分かる。しかし、結果だけ見るとやはりdysonは掃除機以外は鳴かず飛ばずな気がします(数字を見てないのでなんともですが)。
これは、魔法の質問の逆バージョン「dysonと言えば?」を試すと分かるでしょう。おそらくほとんどの人が「掃除機」と答えます。やはりブランドを分けるべきだった。
ただ、dysonがブランドとして「掃除機屋さん」から脱却する希望はありそうな気がします。
先日久しぶりに、以前通っていた美容室に行きました(ここ数年はヨメが頭部両サイドを毎週バリカンで刈ってくれていた、1,000円取られるけど笑)。
すると、ドライヤーが以前と変わっていて、dysonのものになっていました。聞くと、高性能で非常に使い勝手がいい、特にシャンプー後の女性の髪の毛を乾かすのに時短になると。
なるほど。「プロに認められる品質」「使うと他の競合商品よりも確実にメリットになる何かがある」だということがよくわかりました(少なくともドライヤーは)。ここに打開策がありそうです。
「dysonと言えば?」の答えに、「掃除機」以外の抽象度のひとつ高い何かが出るようになると、ブランドを分けずして成功することになるでしょう。
「掃除機以外の何か」は「プロ家電」かもしれないし、「風を操る家電」かもしれないし、それは何かわかりませんが、商品よりもひとつ抽象度を上げた言葉で消費者の頭の中を占領できれば、ブランドを分けなくても商品が売れるはずです。
今回はここまでです。
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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