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今日は七夕ですね。とはいえ特段何かイベントをすることもないのですが(汗)
それにしても暑いですね。この暑さの中、まだマスクをつけている人がいますが、なぜでしょうか?わからん。。。
ていうか、うちのオカンもまだマスクつけています。もはやコ□ナが怖いのではなく、人に顔を見られるのが怖いっぽい。これって心理学の研究テーマになりそうですね。
今、このコラムを喫茶店で書いていますが、となりの席のおじさんもマスクをまだしていました。
でもそのおじさんは小太りで体の動きも鈍く明らかに不健康。なによりガムシロを大量に使ってアイスティーを飲んでいました。コ□ナは怖いけど他の病気は怖くないんかな?ガムシロなんてめちゃくちゃ体に悪いのに。わからん。。。
まあ、人間というのは合理的な判断のみしているわけではないので、だからこそ心理学のような学問が存在するわけですけども。。。
では今週のコロコロニュース。
七夕にひとつ願いごとをするならば、ほんとうの意味で早く世界が平和になってほしいなと思います。
では本題。本日はネーミングのお話。
●ネーミングを変えて売上が爆上がりした商品
当たり前といえば当たり前ですが、ネーミングにより商品やサービスの売れ行きは変わります。
今では定番商品となった伊藤園の「おーいお茶」は、発売当初は「缶入り煎茶」という商品名だったそうですが、「おーいお茶」にしたら売上が6倍(40億)になったそうです。
ベクトルという会社の西江社長という方は、クライアントや出資先の会社名や商品名を変えることで、その会社の株価まで上げることができる(実際に上げた)と以前お話されていました。
このようにネーミングと売上には重要な関係があるわけですが、ここで、ティッシュペーパーで有名なネピアという会社が出している高級ティッシュのネーミングについて取り上げたいと思います。
「モイスチャーティッシュ」というもので、保湿性に優れているため鼻をかみ過ぎても痛くならない、そのかわり他のティッシュペーパーよりちょっと高いよ、という商品です。
これ、1996年くらいに発売された当初は、高級ティッシュ市場も確立されておらず売れ行きはいまいちだったそうです。
ところが、ネーミングを変えたことによって売れ行きは3割増し、最終的には4倍にまでなったそうです。
それが今では多くの人が知っている商品、「鼻セレブ」です。情報はこちらのサイトからの引用です。
サイトの中では「モイスチャーティッシュ」より「鼻セレブ」のほうが高級な印象があるとか、パッケージがネーミングにあわせて高級になった、と解説されています。つまり高級な名前とパッケージになったことで売れたと。
しかし、これに関しては大いに疑問です。疑問は2つ。
- 本当に高級感が出ているのか?
- 高級感が出ているとして、だから売れたのか?
ネーミングを変えて売上が上がったというのは紛れもない事実。ただ、その分析(高級感が出たから売れた)は本当だろうかとということで、考察してみます。
ネーミングが難しいのは、「なぜそのネーミングだと売れるのか?」が非常に感覚的だということです。
私のネーミングの理論は、
- 導入期や新市場の商品のネーミングはわかりやすさ重視
- 成長期、成熟期はわかりやすさよりもイメージ(好感)重視
というものです。
わかりやすさの代表例が小林製薬の商品のネーミングです。
小林製薬は「あったらいいな!をカタチにする」というタグライン(≒キャッチコピー)のもと、今現在は存在しないものを商品化する傾向があり、つまり導入期や新市場開拓の商品が多いといえます。
なので特徴的ながらわかりやすいネーミングが多いですね。
- トイレその後に
- 熱さまシート
などなど、一見ただのダジャレなようにも感じますが、実は使用シーンや効果が連想できる優れたネーミングになっています。
しかし、「かっこいい」「オシャレ」といった印象のネーミングではないです。
「鼻セレブ」もどちらかというとこちらのノリに近いと考えています(なので「高級感って本当に出てるかな?」と感じる)。
●なぜ、お菓子に「ひでぶ」というネーミングをつけてはいけないのか?
- ネーミングが難しいのは、「なぜそのネーミングだと売れるのか?」が非常に感覚的だということです。
と前述しましたが、なぜ「感覚的」になってしまうのか?その最大の理由が「音の持つイメージ」です。
これはデザインでもそうなのですが、イメージはすべてを言語化することがそもそもとてもむずかしい。
中でも、「音感」についてはより一層むずかしいのではないかと感じます。
たとえば料理の盛り付けでいえば、「美味しそう」と感じるものと「まずそう」と感じるもの、これはおそらく多くの人が合致しやすいでしょう。
イケメンとブ男、美人とブス、なんていうのも好みの問題はあれどそれを排除すれば多くの人の判断が重なると思います。
これは、人間は目の動物なので、視覚に関することは単純にデータの量が多いからだと考えます。たぶん遺伝子レベルで視覚情報に関するデータを持っている。
つまり、「音」に関して好印象、悪印象やその他の印象が、デザインなどの「見た目」のそれよりもさらに言語化しづらいのは、この分野のデータが少ないから。
だから言語化するのはより一層むずかしく、ネーミングもむずかしい、ネーミングについて理論的に説明するのもむずかしい、と考えるわけです。
- ポッキー
- パピコ
- ハイチュウ
などのお菓子の名前に
- あべし
- ひでぶ
- うわらば
というネーミングはつけません(笑)。そこまではわかる。
しかし、なぜそのネーミングをつけないのかとなると、説明できませんよね?「パピコ」がOKで「あべし」だとだめな理由も説明できません。どちらも意味は不明なのに。。。
なにかある。確実になにかあるんです。それが商品の売れ行きを変えている理由の大きなひとつなわけです。
ちなみに、「あべし」「ひでぶ」「うわらば」はマンガ「北斗の拳」で雑魚キャラがやられる時の断末魔なのですが、「ひでぶ」の語源は「痛ぇ−、ブー!」だそうです。
これ、言われないとわからないですよね。でも雑魚キャラがひどいやられ方をしたときにぴったりな気がしてしまうのはなぜでしょう?
これもネーミングの分析においての重要な視点のような気がするのです。
他にも、ドラクエの呪文で、炎系の呪文が「ギラ」、氷系が「ヒャド」、回復系が「ホイミ」であることになぜしっくり来てしまうのでしょう?
もっといえば、
- ギラ
- ベギラマ
- ベギラゴン
となると強力さが増しているように「感じてしまう」のはなぜなのでしょう?(知らない人には「??」かもしれませんが)
繰り返しますが、これらの単語に意味はないのです。なのに感じてしまう。。。
●画像を見て、どちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」かわかりますか?
こういったことにひとつの回答を与える理論が「ブーバ・キキ効果」です。
ブーバ・キキ効果は「音の持つイメージ」と「見た目の持つイメージ」には強い相関があるという実験結果を示しています。
こちらをご覧ください。
これ、どちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」かわかりますか?
ぜひ答えてみてください。
・
・・
・・・
・・・・
いかがでしょうか?
実は答えはありません。どちらがどちらだと思うか、という印象調査です。
この結果がまた不思議なんです。
大抵の人が左がブーバ、右がキキ、と答えるそうなんです。しかもその結果はなんと98%!98%のひとが左がブーバで右がキキと答えるというんです!
これすごくないですか?
さらにすごいのが、その回答結果に年齢、性別、国籍、言語は関係ないという!どんな国の人でも、何語を話す人でも、男でも女でも、子どもでもおじいちゃんでも。
ここには大きな示唆があります。
語感には特定のイメージがある、ということ。
言い換えれば人間の感覚は、
「このカタチならなんとなくこういう名前(音)」
「この名前(音)ならなんとなくこういう見た目」
「なんとなくこの語感ならこういう雰囲気」
というイメージがあるということでなんです。
逆に言うと、この感覚から外れていると気持ち悪くて仕方ない、違和感を感じてしまう、というわけです。
たとえば、足が遅かったり運動神経が悪い子の名前が「シュンスケ」だと、その子は学校で友人関係に苦労する、という話を聞いたことがあります。「名は体を表す」なんてことも言われますしね。
だから細長くてチョコレートでコーティングされたスティック状のお菓子が「ひでぶ」ではダメだということなんですね。
「ふわふわ」とか「ニコニコ」とかそういった擬態語もおそらくこの感覚から生まれたものだと思います。
その状態を「意味」ではなく「語感がマッチしているか?」という観点からつけられたものが擬態語なんだと。
これすごくないですか?
で、ここで一番言いたいのはやはり「ネーミングの重要性」です。
「音感」「語感」的にイメージとずれたネーミングをつけると商品やサービスの売れ行きが下がる可能性がある、逆にイメージとマッチした「音感」「語感」のネーミングをつけると売れ行きが良くなる可能性がある、こういったことがブーバ・キキ効果から考えられるわけです。
名前をつける場合は、
- コンセプトやメリット、使用シーンのわかりやすさ
という極めて言語的、左脳的な切り口と同時に(小林製薬方式)、
- 音感、語感
といった極めて感覚的、右脳的な切り口でも考える必要があるということです。
私はこれを前者は「コンセプト型ネーミング」、後者は「語感型ネーミング」と名づけています。どちらもあわせた「ハイブリッド型ネーミング」もあります。
どちらの優先順位が高いかは、その市場の状況に合わせたほうがいいです(導入期の商品はわかりやすく、など)。
しかし、ブーバ・キキ効果からわかることは、たとえ名前がわかりやすくても、イメージとマッチした音感、語感でないと危険だということです(つまりなんだかんだいってハイブリッド型ネーミングがよい)。
私の師匠の伊吹卓先生が考案したメリコの法則の「リ」は「理解できること」を指します。
これは、単純に「わかりやすいこと」を指す場合もありますが、「〜〜っぽい」「〜〜らしい」とも言い換えられます(「オレンジジュースっぽいデザイン」とか)。
つまり意味として理解できることとイメージが合っていること、「リ」には2つの意味があるというわけです。
そして、デザインだけでなくネーミングでも同じことが言える、ということです。
というわけで、冒頭の「鼻セレブ」を見直してみましょう。
- 意味のわかりやすさ
- イメージとしての「らしさ」
という観点から、まず意味は「モイスチャーティッシュ」よりもわかりやすくなりました。「他よりも質の高いティッシュ」ということが一発でわかりますので。
ただし、たくさん鼻をかんでも痛くならない、ということについてはまだちょっとわかりづらいかな。
イメージとしてのらしさは、やはり語感からはあまり高級感を感じないんですよね。そもそも「はな」という語感は「鼻」という漢字を見た途端に「コミカル」な印象を私は感じてしまいます。高級とは逆。
こんなことから、「高級感が出たから売れた」は分析として間違っていると私は考えます。まあ売れてるからいいんでしょうけど。。。
御社の商品、サービスのネーミング、いまいちど見直して(聞き直して)みてはいかがでしょうか?
ビズアップでもネーミングサービスやタグライン(キャッチコピー)作成のサービス、つまり「言葉のデザイン」も行っています。
今回はここまでです!
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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